会長挨拶


PF-UA会長  高橋 嘉夫 (東京大学)

2021年4月よりPF-UAの会長を仰せつかりました東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の高橋嘉夫です。前任の清水敏之会長に比べてPF-UAでの経験が浅く力不足ではありますが、新PF-UA幹事、運営委員の皆様と共に、PFの発展のために微力を尽くしたいと思います。そのためにも、是非ユーザーの皆様から忌憚のなきご意見を頂き、それをシーズとして様々な面に活かすことで、 PFがよりよく変わっていくお手伝いができればと思っております。

 現在、PFおよびその母体である物質構造科学研究所(物構研)は、小杉信博物構研所長、船守展正施設長を中心に、様々な改革や諸課題への対応が進められ、将来の発展への強い意気込みを感じています。一方、国内の放射光分野の状況としては、東北放射光の建設が進められ、SPring-8でも次世代計画が進むなど、PFを取り巻く状況は大きなうねりの中にあります。そうした中で、アカデミアの研究者の利用が多く、人材育成の拠点であるPFがさらに存在感を増し、人材育成と学術の継承に貢献することが、この分野の持続的な発展にとって極めて重要であると確信します。そして、ユーザーが着実に成果を挙げ、また斬新なアイディアを提供することが、PFが「研究者が集い、時代を先導する施設」であり続ける上で不可欠なことと思います。垢ぬけない研究が、PFを利用させて頂くことで珠玉の研究に生まれ変わることを何度も経験している身としては、大学共同利用機関法人としてPFがいかに重要であるかをもっと世の中の人に分かって頂ければと願います。

 そのためにも、PFのアクティビティを積極的に発信することは、施設にとってもユーザーにとっても非常に大事なことだと考えます。PFが所属する物構研は、素核研と並んでKEKを構成する二本柱の1つです。素核研は、物質や宇宙の始まりに関する「究極の真理や根源」を加速器を利用して追究しています。これに対してPFは、47ものビームラインが同時に稼働し、物質と生命の探究に関わる様々な分野の研究を産生する光の工場です。ただ、それだけにまとまって何を目指しているか分かりにくい側面もあります。人類は今、環境・気候変動・資源・エネルギー・食糧・人口爆発・飢餓などの様々な問題に直面し、「持続可能な社会の実現」が急務です。これは発展のみを考えてきた人類の歴史の中で、(コロナ以上に)最も困難な問題と言えます。そんな時代だからこそ、PFでの多くの研究が、広義の「持続可能な社会の実現」に関わることをアピールすべきと考えます。2050年には100億の人口を数える人類が平等に暮らすためには、原始時代に戻ることはできず、高効率な社会の実現が必須です。こうした社会を実現する新規デバイス・材料・触媒などの開発、人々の健康を保証する薬学・生物学・医学、食糧生産を支える農学、エネルギー・資源や環境・気候変動の研究などと、それらの基盤となる物理・化学・生物・地学の基礎科学がPFで展開されていることが、KEK全体の社会との関わりにおいても重要と考えます。物構研・PFがそれらを担うことで、KEK全体が、加速器を利用して人類の「夢」と「安全安心(持続可能社会の実現)」の両方に貢献できる、今後の日本や世界にとって不可欠な組織になるといえるのではないでしょうか(PFでは「夢」の研究も担っている点も重要)。PF-UAとしても、こうした成果の創出と社会へのアピールに貢献できればと考えます。
最終的には、こうした活動が現実的に大きな課題となっている運転時間の減少の流れを断ち切ることにつながればと思います。2021年は施設側の努力により、年間の運転時間が2割ほど増加することになりました。我々ユーザーは、こうした施設側の努力を無にせず、次につなげられるように、1つでも多くよい研究を進め、その成果を発信していかねばなりません。そしてこれらを基盤として、施設とPF-UAが一体となって、関係各所にPFが学術の成果創出と人材育成に果たしている役割をアピールすることで、運転時間の確保や長期的計画の推進について理解が得られればと思います。

 これ以外の具体的な施策として、以下のようなことが考えられるかと思います。
(1) 博士課程学生の研究の奨励: PFが日本の関連分野に無くてはならないものである理由が、教育への効果です。PFで学生が実際に装置に触りながら自分のデータを紡ぎ出すことが、その学生の成長に大きな役割を果たすことを我々は何度も目の当たりにしてきました。こうした学生(特に博士課程の学生)の後押しをすることにPF-UAがわずかでも貢献できればと思います。具体的にどのようなことができるか、皆様からご意見を頂ければと思いますが、幸いPF-UAには、これまでに蓄積された繰越金が少しあるようです。個人的なアイディアとしては、これを活用して、例えばPFを用いた研究を博士課程学生が論文化し投稿する際の英文校閲費用や投稿費をサポートする、などのことを考えても良いと思っています。
(2) 他分野との連携: 「ユーザーコミュニティ同士の連携」もPF-UAの活動の重要な役割です。これについては、PF-Newsでの各ユーザーグループの紹介などの活動を継続すると共に、物構研の特徴である中性子、ミュオン、低速陽電子などの他のプローブを用いた研究の紹介なども進め、マルチプローブ研究を奨励する素地が築ければと考えます。
(3) 中期的な計画への対応: PFは、今後の長期的計画を進めることを念頭に、運転と整備をバランスよく進める方針を示されています。特に私の任期中の2020年代前半では、「老朽化対策を実施しながら、PFリングの高度化とR&Dビームラインの整備を進めること」が示されています。これらの過程でユーザーからのインプットが必要な場合には、ユーザーからの意見をとりまとめ、施設側と連携していくことが重要です。

 これ以外にも、PF-UAとしての課題は多くあるかと思います。是非、ユーザーの皆様、施設の方々、そしてこれをお読み頂いたあらゆる人と意見交換をし、PFのユーザー組織としてのPF-UAの今後の活動に忌憚のなきご意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願い致します。そして、何よりユーザーとして大事なことは、施設側と連携し、学生もどんどん実験に参加してもらいながら、PFでよい研究を展開し、それを発信していくことです。皆様のご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

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