会長挨拶
PF-UA会長 近藤 寛(慶應義塾大学)
2024年4月から高橋前会長の後を引き継がせていただきました慶應義塾大学の近藤と申します。フォトンファクトリー(PF)のユーザーとして長い間、PFにお世話になって参りましたが、この度、PF-UAの会長を務めさせていただくに当たり、UAの活動を通して、PFでの皆様の研究・教育活動を少しでも後押しできればと思っております。何卒、宜しくお願い申し上げます。
自然界の物質や生命現象を理解するための道具として、放射光は欠かせないものになっています。放射光は物質世界や生命現象を照らし出す優れた明かりのようなものと考えてもよいかもしれません。私は主に軟X線領域のXAFSや光電子分光を使って機能性表面のオペランド計測をさせていただいておりますが、機能する物質の構造と電子状態を調べる道具としての放射光への期待は、どの分野においても増々高まっていることを感じます。是非、この大切な光を、できるだけ多くの人に有効に使っていただきたいと思っています。
さて、PF-UAは、ご承知のように、放射光実験施設フォトンファクトリーのユーザー組織で、その活動の目的は、施設とユーザーを繋ぎ、皆がより良い放射光利用経験が得られるよう支援することです。特に、フォトンファクトリーは、大学共同利用機関が運営する放射光実験施設として、施設もユーザーも高い自由度の中で研究活動を展開しながら、支援し合い切磋琢磨してきた歴史があります。そのような経験を活かしながら、より良い放射光利用実験ができるように前進し続けることが大事だと思っています。そしてもう一つ大事なのは、フォトンファクトリーが大学等の学校機関に強い繋がりをもつ施設で、多くの場合に、貴重な学びの場にもなることです。PF-UAは、ユーザーがより良い学びができるよう支援するのがもう一つの大事な目標だと思います。また、フォトンファクトリーは世界トップレベルの加速器研究機関であるKEKの中にあり、多くの優れた放射光技術が生まれてきたことを活かしてより良い施設へ発展することへ、ユーザーサイドから協力することもUAの大事なミッションだと思っています。
これらのことを頭に置きながら、この3年間でどのようなことを大事にしながらUAの活動を進めるかについて述べさせていただきますと、一つ目は、高橋前会長が施設や幹事の皆様方と一緒に進めてこられた新しい活動をしっかり継承していくことです。PFをよい学びの場としていただくためのサマースクールや各種講習会を後押しいたします。また、特に若手の研究を奨励する目的で設けられたPF-UA学生論文賞を規模拡大を目指しながら運営して参ります。さらに、PFの将来を見据えて立ち上げられている2ビーム利用ビームラインや開発用ビームラインの利用や高度化に関するPF研究会を継続的に開催していきたいと思います。二つ目はユーザーが施設を利用する環境をより良くし、施設を利用するメリットを高めることです。これまで、施設のご尽力で利用環境は格段によくなりましたが、さらにユーザー間の相互交流を通してユーザーがPFにコミットする価値を高められればと思っています。その鍵の一つはユーザーグループの活動にあると思っております。コロナ禍のためにユーザーグループの活動がだいぶ抑制的にならざる得ない時期を過ごしましたが、これからは、ユーザーグループの新たな活動を後押ししていきたいと思います。三つ目は大学等の外部機関へのPFのアピールです。施設自身も努力をされていますが、その施設を使わせていただいている私たちユーザーが大変充実した感覚をもって利用させていただいていることが外部の機関に伝わることが、新たなユーザーを増やし、また、様々なコラボレーションの機会を増やすことで、ユーザーコミュニティーを活性化するのにつながると考えています。そのためにPF-UAがもつ器、例えばホームページやUAが主催する様々な行事を通して、広く外部機関へアピールすることができればと考えています。それによって、PFの外部コミュニティーとのより強い繋がりを築いていくことを目指したいと思っています。
私は研究人生の途上でPFを通して放射光に出会えたことを心から感謝しています。将来、多くの人が放射光をラボの天井の明かりぐらいの気軽さで日常的に使うようになっていただきたいですし、使ってみると、ここまで見えた!という感動を与えるような「身近ですごい光」になっていって欲しいと思っています。もちろん、光を作って使えるようにすることがそのために必須の技ですので、それに情熱をもって取り組む人も育って欲しいと思っています。このようなことを思い描きながら、上で述べましたことを大切にしてこの3年間を歩んで参りたいと思います。どれもユーザーと施設の皆様のご協力が不可欠です。皆様のご協力を心からお願いする次第です。何卒、宜しくお願い申し上げます。