会長挨拶

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PF-UA会長 清水 敏之 (東京大学)

2018年4月より,PF-UAの会長を平井光博前会長より引き継ぐことになりました東京大学薬学系研究科の清水です。新PF-UA幹事,運営委員の方々とともに,人材育成を含めた日本の放射光科学の基幹施設であるPFの発展に微力を尽くしたいと考えております。ユーザーの皆様の一層のご協力,ご助言を宜しくお願い申し上げます。

専門はタンパク質結晶学,構造生物学になります。私が最初にPFにお世話になったのは大学院生の頃であり(約30年前),その後は主にBL-6に設置されていた坂部式ワイセンベルクカメラを利用してタンパク質のX線結晶構造解析を行ってきました。ここでデータ収集を行うためには大きなイメージングプレートのカメラへの設置,結晶の軸立て、X線照射後イメージングプレートのBASでの読み取り,イメージデータの磁気テープへのバックアップなど非常に手間のかかる作業が多く,1日で10数セットのデータ収集するのがやっとのことでした。もちろん徹夜は当たり前のことでした。もっと楽に早くデータ収集をしたいというのは当時のユーザーの共通した望みだったと思います。その後は予想をはるかに超える技術の進歩がありデータ収集段階は自動化がかなり進み,まさにその当時の望みはかなり叶ったのではないかと思います。

このように私が学生の頃からお世話になってきたPFですが,今もなお現役で動いています。そこでは絶え間ない設備更新,丹念な維持管理などなど,研究所・施設スタッフの多大なご尽力があり,また,ユーザーの方々のご努力、ご協力があったことは言うまでもありません。私の専門分野でも放射光施設の利用は必要不可欠なものであり,我々ユーザーは非常に整備された環境で放射光施設を利用してきました。冒頭にも述べましたように現在はデータ収集の自動化・効率化が以前では考えられなかったほど進みました。これはビームライン担当者,PF施設側の不断の努力によるものであります。しかし,PFも当然のことながら老朽化が進んでいます。PFが今や世界最古の大型ring光源であるとの現実を直視せざるを得ません。

このような昨今の状況を踏まえPF施設と新執行部,運営委員の方々とともに,下記の課題に取り組んで参りたいと考えます。

・運転時間の確保および研究・教育への悪影響の解消。
これは常に論じされている課題ですが,なかなか有効な対策がありません。厳しい財政状況を考えると国からの助成はあまり期待できません。その一方で光熱水料の上昇など,状況を不利にさせる要因は増える一方です。施設側も手をこまねいているわけではなく民間企業資金の導入などを行う予定ですが,PF施設と一体になって,研究所,機構,関係各所に改善の要望をしていきたいと思います。

・ユーザーコミュニティ同士の連携
PF-UA会則にはPF-UAは「PF における研究活動を一層推進するために,PF に対して,施設の整備,運用,利用の 提案をおこない,PF との意思疎通,会員相互の交流・意見交換,ならびに利用の円滑化を図るとともに, PF の次期計画を推進することを目的とする」と明記されています。ただ,例えば運転時間の要望に行くと、オールジャパンの要望かどうかということを聞かれます。第一義的にはPF-UAはPFのユーザーグループの団体ですが,広域的なコミュニティ連携も重要な課題であると思います。

・次々期光源に向けて
平井会長任期の間は次期光源が大きな課題の一つでしたが,これからは次々期光源をにらんだ問題は常に意識していかなければならないと考えます。QST(量子科学技術研究開発機構)を主体として進められる3GeV計画に協力し,次々期光源実現に向け施設スタッフ,ユーザーが協力していくことが重要であると考えられます。ユーザーとしては現有施設を利用し、これまで以上の成果をあげ続けていくことも次々期光源の実現に重要だと思います。

これまで私自身は自分の専門分野以外の放射光科学の分野については正直なところあまり目を向けてきませんでした。当然のことながらPF-UAは様々な科学分野を含む研究者から構成されており,様々な事情,要望があり,上に挙げた課題以外にも様々な問題に直面することになると思います。PFにおける研究活動を一層推進するためにも、ユーザーの皆様と施設の皆様の橋渡しを心がけていく所存です。このためにはユーザーの皆様のご協力が必要不可欠です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

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